女の子として見てください!
だけど、私はなんとか声を絞りだす。

でも、葉子ちゃんを早くもっと安全な場所に連れていきたいから、翔さんに謝るのはあとにして、私はまず、今しがた起きた出来事を翔さんに説明した。

翔さんは、うんうんと頷きながら、状況をすぐに理解してくれた。


「でも、その男ふたりは地下でのびてるってわけだな? まったく、助けがいのない女だな」

う、すみません、私ゴリラ女ですから。そもそも相変わらず”犯罪を呼ぶ女”ですみませーん!

でも、翔さんの表情は優しいものだった。ほほえんでくれていた。
もう、怒っていない?
そう思って、安心した時だった。


「……松城っ、危ないっ!」

「え?」

翔さんの言葉を聞き返すのと同時に、私は翔さんに突き飛ばされた。


いたた……と身体を起こすと、私は目を疑った。



私のうしろにいたはずの葉子ちゃんが。

さっき床に落ちていたナイフを手にしていて。


おそらく、私をうしろから刺そうと思ったのだろう。

翔さんがそれをかばってくれたようで、翔さんが右手でそのナイフを受け止めていた。

翔さんの手からは、ポタポタとたくさんの血が滴る。


私は慌てて立ち上がり、葉子ちゃんの手からナイフを奪い取り、投げ捨てた。

「葉子ちゃんっ、なんで……!」

私が聞くと、葉子ちゃんは両手を震わせて、目にいっぱいの涙を浮かべて――私を睨んだ。そして。


「アンタのせいで、光太郎が変わっちゃった……!」
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