女の子として見てください!
廊下の待合スペースの長イスに腰掛け、翔さんを待つ。

ソワソワしながら腕時計を何度も確認したけど、思ったよりは早くに診察室の扉が開き、翔さんが出てきた。


「翔さん! 大丈夫ですか!?」

私がイスから立ち上がって翔さんに駆け寄ると彼は、

「松城? 待ってたのか?」

と、まるで「なんでここにいる」と言わんばかりの表情で私を見て、そう言う。
そりゃ待ってますよ!私のせいで好きな人がケガしたんですから!心配に決まってるでしょ!


「手は、どうでした? ちゃんと動きます?」

私が翔さんの手を握りながらそう尋ねると、彼はなんてことないような口調で答えた。


「別に普通に動く。二針縫っただけ」

「痛くないですか?」

「もうなんともない」

よ、良かった。いっぱい血が出てたし、すごく心配だった……。
包帯もしていなくて、縫ったところに少し大きめのバンソーコーをしているだけだ。大きなケガには変わりないけど、大事にはならなかったのも確かみたいだ。


安心した私が彼から手を離すと、

「葉子ちゃんは?」

と尋ねられる。


「翔さんが診察室に入ってすぐに、飯尾君と一緒にパトカーで署に向かいました。
親御さんにも連絡がいっているはずですし、今頃は家族も署に到着した頃かと。
……光太郎君いわく、葉子ちゃんはあまり家族とうまくいっていなかったようなので、ちゃんと話せるか不安がありますが」

「光太郎君には連絡したのか?」

「はい、私からさっき連絡しました。詳しくは話していませんが、無事に見つかったからもう大丈夫だ、と」

「そうか。……家族とちゃんと話し合えるかは確かに心配だけど、葉子ちゃんのことを誰よりも心配してくれる光太郎君の存在があるから、きっと大丈夫だ。たとえ光太郎君から葉子ちゃんに恋愛感情がなくても、彼が葉子ちゃんの子と心配していることにはなんの変わりもないから」

翔さんが優しい表情でそう言うから、私もなんだか一気に安心してしまった。さっきまであんなに不安だったのに。
< 77 / 155 >

この作品をシェア

pagetop