女の子として見てください!
声のした方へ振り向くと、飯尾君が署の方から歩いてくる。

「車で迎えに行こうと思って待機してたんですけど、なかなか連絡来ないんで歩いて帰ってくるのかなと思って見に来たら案の定でしたね。伊浅さん、手、大丈夫でした?」

「あ、ああ、平気平気」

「良かったです。ところで、ふたりでそんなにくっついてなにしてたんですか?」

「「え゛!!?」」

ヤ、ヤバイ!キスしようとしてたとこ、見られてた!!?



……と、思って焦ったけど。




「美桜さんの目にゴミでもついてたんですか?」

と、飯尾君はニコニコしながら言う。
彼が天然で本当に良かった。




その後、私たちは三人で署まで戻ることになった。

だけど、私はとなりを歩く翔さんに、コソッと小声で言った。


「そういえば翔さん、さっき三丁目で私を見つけてくれた時、『美桜』って名前で呼んでくれましたよね?」

それに対し、翔さんも小声で「……忘れた」と答えた。

忘れてなんかないですよね?忘れてないから、そんなちょっと照れた表情してるんですよね?


だから、私は。




「……よければ、また名前で呼んでください」

翔さんだけに聞こえるように、そっとそう伝えた。

彼がどう思うかは、わからなかった。調子に乗るなって言われるかもしれないとも思った。



だけど。




「……ふたりきりの時だけな。美桜」



さっきよりも小声で。でも、確かに。


美桜って。

名前で呼んでくれた。



「だっ……!」


大好き!!と、思わず叫びそうになったのを、慌てて飲み込んだ。ダメダメ、飯尾君もいるんだから!翔さんにも、焦った顔をさせてしまった。



「お前、ほんとにいろいろ気をつけろよ」

「はぁい」

「ふたりとも、なにコソコソ話してるんですか?」

「「なんでもない」」


たくさんの不安や緊張を感じた日だったけど……最後はハッピーエンドに終わった!

私やっぱり、翔さんのことが大好き!!
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