女の子として見てください!
水族館なんて、ほんとに久しぶりだった。一年ぶりくらい?


入場してすぐのところにある大水槽コーナーでは、彩りどりの何種類もの魚たちが群れを成して優雅に泳いでいた。


屋内解放のプール型水槽にはかわいいペンギンたちがヨチヨチと歩いていてキュンとしたし、その隣の水槽ではオットセイもキュートだった。


魚だけじゃなく、自然水景コーナーで見る、水草などの水を取り巻く自然の景色を見るのも楽しかった。


今は、アクアコーナーというところで、たくさんの水槽が並ぶコーナーを見ている。それぞれ水槽の中で、それぞれの魚たちの、それぞれの生態を見ることができる。


「わ〜。こんな魚いるんだ」

多種多様の魚たちを一度に見ながら隣にる翔さんにそう言うと、「なんの魚が一番気になる?」と聞かれる。


「え〜、そうだなぁ。どの魚たちもみんなおいしそ……じゃなかった、かわいいからなぁ〜」

「おいしそうって言った⁉︎ 今、おいしそうって言った⁉︎」


まったくお前は、とは言われるけど。

今日の翔さんは、なんだかいつもよりやさしくて。

いや、いつも本当はやさしい人なんだっていうのはもちろんわかってるけど。
そうじゃなくて、もっとわかりやすくやさしい気がする。

さっき服を褒めてくれたのもそうだし、私が人とぶつかりそうになると肩をやさしく抱き寄せてくれたり。

私を見る瞳も、話をしてくれる声も、いつもより穏やかな印象があった。

『なんかいつもと全然違う』なんてことをさっき翔さんに言われたけど、それは、翔さんにも言えることだと思う。
いつもよりやさしくされたら、いつもよりさらにドキドキされちゃう。

いつもの翔さんも大好きだけど、今日の翔さんにもいっぱいときめいてしまうの。


翔さん、今日はなんでそんなにやさしくしてくれるの?


私のこと、女性として見てくれているから?



期待がどんどん大きくなっていってしまうよ。
< 86 / 155 >

この作品をシェア

pagetop