女の子として見てください!
「え?」と思わず聞き返してしまう。

ごめん、ってなにが?


私がじっと彼を見つめていると、翔さんは口を開いた。



「ごめん。松城とは、付き合えない」

彼は、さっき私に伸ばしかけていた右手を、ズボンのポケットに突っ込みながらそう答えた。



「な、なんでですか……?」

私はまた、つい聞き返してしまった。


そりゃ、付き合ってもらえるなんて確信があったわけじゃないけど……。



けど……。




「私が、見た目と中身のギャップがひどいからですか?」

「えっ、違う。それは関係ない!」

「じゃあ、なんで……っ」


今まで、たくさんの男性にフラれてきた。

そのたびに、もちろん傷ついてはきたけど。


でも、翔さんにフラれるのは、今までのどんな失恋よりもキツくてーー……。



「……ごめん。理由は言えないけど、松城のギャップがどうとか、そういうのでは本当にないから」


……翔さんがそう言ってくれたのは彼のやさしさなのかもしれないけど。


やさしくないよ。

たとえば中身がキライだから、とかハッキリ言われた方がマシだ。

理由を言ってくれなきゃ、ただただ苦しいだけだよーー……。



「……思ったより寒いし、帰るか」

翔さんはそう言って、私に背を向け、ついさっき来たばかりの道を戻っていく。

翔さんを照らすキレイな夕焼けが、今の私には残酷に見えた。


その場に立ち尽くすわけにもいかないので、私も後ろから翔さんについていく。

ついていきながら、涙が出た。

嗚咽をガマンできなくて、何度も何度も「ひっく、ひっく」と繰り返した。まるで子どもみたいなのはわかっていたけど、止められなかった。

翔さんも、私が泣いていたのは当然気づいていたと思うけど、彼は振り向かなかった。

私たちはそのまま、なんの会話もないまま電車に乗り、あとのことはもうよく覚えていない。ただただ泣きながら、家に帰った。
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