女の子として見てください!
「はああ~ぁ……」

月曜日になっても、私の気持ちは晴れることはなかった。

それどころか、フラれたことを思い出すたびに心の傷がますます深くなるばかりで、今もこうして、デスクに突っ伏した状態で今日何回めかの深いため息をついた。

ちら、と時計を見れば時刻は十六時になるところだった。

一日中重い気分だった。
職場ではどうしたって翔さんと顔を合わせることになるし。顔を合わせればフラれたことを思い出さざるをえないし。
前向きなのが私のいいところだって自分では思っているけど、今回の件では前向きになんかなれないよ……。


「どーしたんすか、美桜さん。今日はずっとテンション低かったですね」

ポッキーの箱を片手に、飯尾君が私の隣に立つ。

今日も相変わらず、そのポッキーをくれることはない。



おそらく心配して話しかけてくれたのはうれしい。けど、私のテンションは低いままで。

「まあ」

とだけ返した。


「フラれたんですか?」

「……」

「元気出してくださいよ。いつものことじゃないですか」

フラれたことを決めつけられたあげく、最悪の慰め方をされた。これは彼の天然さのせいであり、彼にとってのやさしさなのだけれど。


「もういいよ。ほっといてよ」

そうはいっても不貞腐れて、私がそう言うと飯尾君は。


「まあ、ほっとけと言われればほっときますけど。
でも、前向きなのが美桜さんのいいところじゃないですか。
一度フラれたくらいでなんですか。またがんばればいいじゃないですか」


……それは、さ。
確かにそうかもしれないんだけど。


でもそれって、自分の気持ちを一方的に相手に押しつけるみたいにならない?

確かに、翔さんには元々『好きにはならない』と言われて、私はそれでもアタックし続けてきた。
だけど、今回は本当にハッキリとフラれた。告白して、申しわけなさそうに「ごめん」と言われた。
理由を言ってくれなかったから諦めきれない部分もあるけど……これ以上アタックし続けるのは、私のエゴなんじゃないかなとも思ってしまって。


そんなことを考える私は、相当暗い顔をしていたのかもしれない。あの飯尾君が、
「食べます?」
と、ポッキーを一本くれた。


そのポッキーを素直にいただき、口に含んだその時。



カタン、と誰かが席を立つ音が聞こえ、振り向くとそれは翔さんだった。

翔さんはパソコンを閉じ、イスの背もたれにかけてあったスーツのジャケットを羽織る。
あれ、帰り支度?
まだ十六時なのに?
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