女の子として見てください!
病院の待合室で、私はひたすら翔さんを待つ。

ひたすらと言っても、そんなに時間はかからなかった。

診察室の方からこちらへ戻ってくる翔さんを発見するのと同時に、私は待合室のソファから飛び跳ねるように立ち上がり、翔さんに駆け寄る。


「翔さん! 大丈夫でしたか!」

思わず大声を出すと、「バカ、病院でくらい静かにしろ」と注意される。


「手、見せてくださいっ」

私がそう言うと、翔さんは「見ても仕方ないだろ」と言いながらも、しぶしぶといった感じで私に右手のひらを見せてくれる。

私はその手を両手でしっかりと握り、まじまじと傷跡を見つめる。


「ん? 傷これですよね? こんなに目立たなくなるものなんですね?」

「まあ、そうだな」

「ほおぉ~……すごい」

「オイ」

「え?」

「手」

「あっ、すみません」

私は思わず握りしめていた翔さんの手から自分の手を離した。


「すみませんでした」

「べつにいいけど……」

「えと、その……」

どうしよう、変に意識しちゃって、言葉につまって、妙に気まずい!
この空気はダメだ!なにか言わなきゃ!


「キ、キズがキレイになっていて安心しました!
今の医療ってすごいんですね!
これで心おきなく、凶器を持った被疑者に立ち向かえます! 顔とかに大きなケガしても、傷はキレイに治るってことですもんね!」

「顔にケガするかもしれない時は、少しは気にしたら?」

と、冷静に翔さんにツッコまれるけど、私はとにかく、翔さんのキズが無事に治って良かったと心底安心した。

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