女の子として見てください!
「じゃ、帰るか」

翔さんにそう言われ、私は頷く。

私たちは一緒に病院をあとにした。



駅まで歩いていく途中でいろいろ会話はしたけど、思ったより気まずさはなかった。

今日一日、署内では気まずかったけど、ふたりきりになれたことが良かったみたい。

もちろん、私が気まずくならないように翔さんが気をつかってくれたっていうのもあると思うんだけど。




駅の近くのケーキ屋さんの前にやってきた時、翔さんに「松城って、ケーキとか甘いものは好きなの?」と聞かれる。


「え、好きですよ」

「ふぅん。女の子らしいとこあるじゃん」

「え?」

翔さんが言おうとしていることの意味がわからなくて、思わずそう聞き返すと。


「松城は、自分で自分のこと女らしくないとか、ゴリラだとか言うけど、別にそんなことないと思うよ。いつも笑顔で前向きなところとかすごく魅力的だと思うし、ケーキ好きなところもかわいいし、そもそもそうやって悩むこと自体、女らしいと思うよ」

翔さんの言葉はやさしい。
やさしいんだけど。

さっきからまっすぐ前を向いていて、すぐとなりにいる私の顔を見ない。

だから、どこか距離を感じる。


翔さん、やさしくするならこっち見て?

そうじゃなきゃ、


「……だから、自信持って次の恋愛にいけ、っていう意味ですか?」

そんなふうに、捉えてしまうよ。


でも、残念なことに、その解釈は間違っていなかったみたいで。


「そうだな。俺なんかよりもっといい男が、きっと松城の近くにいるよ」

そう、言われてしまって。
彼はやっぱり前を向いたままだった。
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