再会


赤い煉瓦の屋根が印象的で、緑溢れる山々との対比が、目に鮮やかだ。


「苦労して登った甲斐があったわ。確かに、この景色は、なかなか味があっていいわね」


リリィも、ハイデルベルクの町並みが、気に入ったようだ。


「まぁ、確かに綺麗やけどさ。大学都市、ちゅう割りには、上品すぎひんか?えらい静かやし、なんや、お高そうやなぁ」


ジュンは、なんだか物足りない様子。


「学生が、あんたみたいに、馬鹿ばっかじゃ困るでしょ」

「リリィ、俺のこと、馬鹿って言うたなぁ!馬鹿って言う方が、アホやねんで!」

「あんたに、アホ呼ばわりされる覚えは、ないわよ!」


また、始まった。

リリィとジュンってば、口を開けば、この調子なんだもん。

昨日のフランクフルトからそうだ。

私とアキは、なんだかその様子がおかしくて、二人のやり取りを見ては、笑ってたんだ。

リリィもジュンも、二人とも口が達者だから、いつまでも終わりのないやり取りが繰り広げられてる。

でも二人とも、そのやり取りを楽しんでるようで、生き生きしてるんだけどね。

そこには、パリの凱旋門で泣いてたリリィも、アムスで弱音を吐いてたジュンもいない。

それが、嬉しかったんだ。






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