再会
さっきから、重たいバッグパックを背負ったまま、ユースホステルを捜し歩くこと3軒、全て断られてしまったのだから。
気づいたのは、パリの街中に、自分と同じバッグパッカーの若者が多いことだ。
イギリスでは、ロンドンにしか滞在しなかったので、それほど感じなかったけど。
この街には、様々な国からやってきた、おそらく20歳前後だろうと思われる旅人で溢れていたのだ。
しかもユースを見つけても、受付で私のたどたどしい英語と、相手のフランス人のこれまた覚束ない英語で、会話にもなってやしない。
ただ分かることは『私が眠るベッドはない』と言われていることだった。
こんなに早く野宿することになるとは……
つい今しがた断られたユースの前で、疲れ果てた私は、荷物を置き壁際に腰を下ろした。
すると、なにやらユースホステルの中から、威勢のいい叫び声が聞こえてきて、思わず扉の方に目を向けた。
「なんでベッドが一つも空いてないのよ。そんなわけないでしょ?ベッド一つでいいって言ってるじゃない、日本人だからって舐めてるわけ。あたしだってフランス語くらい喋れるわよ。もう、ここには二度と来ないんだから。アッカンベーだ!」
どっからどう聞いても、明らかに日本語。
久々の日本語に、心が予想以上に懐かしさを覚えたものの、“アッカンベー”って……
思わず吹き出してしまった。