再会
アキに連れてこられたのは、大きなビアホールだった。
「ミュンヘンは、世界的に有名なビールの街なんだ」
「なんや、俺のためにある街やな」
「あぁ。毎年“オクトーバーフェスタ”って言う祭りがあるんだ。九月の末から16日間行われるビールの祭りでさ。一万人も収容できる仮設ビアホールや移動遊園地なんかがいくつも出来て、町中がお祭り騒ぎだ」
「大変じゃない。街中がジュンだらけになっちゃうわ!」
「こらこら、リリィ~?!」
「あっ、きたきた、待ってました~。ほ~ら、ジュン!」
体格のいいおばさんが、1リットルのジョッキを四つ、軽々と運んで来て乾杯した途端に、ホール内には陽気なブラスバンドの演奏が始ったんだ。
「すごい!みんな歌ってる~!」
私の声なんか掻き消されてしまうほど大きな声で、周りの席のドイツ人たちは、みな立ち上がりジョッキを掲げ、大きな体を揺らしながら歌い始めた。