再会
ボーっとしてる私を、彼女は肘でつついてきた。
「ないなら一緒に言ってくれるって」
「あ、はい」
なんのことかサッパリ分からずそれだけ言うと、また二人の会話が始り、最後に彼女が
「Merci.」と言うと、青年は笑顔で中に戻って行った。
「言ってくれるって何を?」
私は、ガイドブックをバッグにしまい込んでいる彼女に訊ねた。
「彼が空いてるユースを探してくれたらしいの。で、あんたの分も電話しておいてくれるって。さぁ、行くわよ。もうこの荷物早く下ろしたいのよ」
ふて腐れながらも、さっさと準備をする彼女につられて、私も立ち上がり、バッグパックを背負った。
よかった。
どうやら今夜の野宿は免れたようだ。
「あんた名前は?」
「え?」
既に歩き始めた彼女を追いかけていくと、並んだところでそう聞かれた。
「あたしは要梨々子(かなめりりこ)。リリィよ。あんたは?」
「私は水島礼(みずしまれい)」
「レイね。よろしく」
これが、私とリリィの出会いだった。