再会
「なんかドキドキするわね」
「ほんまや、なんやコレ、海に突っ込んで行きそうやな」
四人用のコンパートメントは、近づくヴェネツィアへの期待と興奮で満ちていた。
ジュンとリリィは、窓から体を乗り出して空を仰いでいた。
「こんなに暑い所に来たのは、久しぶりだ」
隣に座るアキも、燦々と照り付ける太陽を仰ぎ、煌く水面を眺めながら、眩しそうに呟いた。
今まで巡ったヨーロッパの北部とは違い、ここはとにかく暑い。
全開にされた窓からは、潮風が吹き込み、体にまとわりつくようだった。
次第に近づいてきたその街は“アドリア海の真珠”“アドリア海の女王”など名声を欲しいままにしてきた。
ヴェネチィア湾のラグーンに出来た、人工島の集合体だ。
118個の島と400個の橋、そこを縦横無尽に無数の運河が走る、世界にも例のない水上都市。
その街が近づくにつれ、私たちはその幻想的な美しさに言葉を失った。