再会
「本当に、海に街が浮いてるみたい」
私の素直な感想だった。
「ヴェネチィアには、車が一台も通ってないねんで」
「えぇ、そうなの?じゃあ、救急車とかパトカーとかは?」
相変わらず、ジュンの言葉に一番に反応するのはリリィだ。
「ここでは全部、船なんやって。なぁ、アキ」
ちょうどその時、サイレンを鳴らしながら、ものすごいスピードで飛ばしていく船とすれ違った。
「あぁ。ちょうど今通った青い船、あれは警」
「へぇ!」
私が感心したように言うと、今度はジュンが割り込んできた。
「俺かて知ってるで。赤いのが消防船、灰色のはゴミ船、白と黒のは急行船や。ここでは、郵便も貨物も病人も犯罪者も、みーんな水の上を運ばれていくんやで」
「はいはい、偉そうに!どうせ、どっかのイタリア人の受け売りなんでしょ?」
「なんやリリィ、アキやったら素直に感心して、俺やったらあかんのかい?」
「あんたの話は長いのよ!」
また始った。
これが始ると二人の世界なんだから。