再会


そんな二人の様子は、アキの耳にはもう届いてなさそうだ。

彼の瞳は、真っ直ぐとヴェネチィアの街並みに向かっていた。

私も並んで手すりにもたれかかりその景色を見つめる。



「この景色は、もう200年以上も前から、変わってないんだって」



そう囁くアキの声が、ヴァポレットの走るエンジン音に混じって、私の耳にも微かに届いた。

独り言?

いや確かに私に宛てた言葉だ……と思う。



だって、その真っ直ぐな瞳は、まるで海の向こうの大パノラマに話しかけているようなんだもの。






< 184 / 319 >

この作品をシェア

pagetop