再会


「これは、母さんの手作りなんだ。アロマテラピーが趣味で、石鹸とかよく作ってるから。これはメリッサの香り。精神が安定する効果があるんだって言ってたな」


確かに……

出会った時、突然抱きしめられて、戸惑ってるはずなのに、何故か感じた安心感はこれだったのかもしれない。


「さっすが、アキのおかんやなぁ。石鹸手作りなんて初めて聞いたわ。うちのおかんなんか、石鹸言うたら、スーパーで特売のミューズ、山ほど買ってきよるで」

「ミューズも馬鹿にできないわよ。あんたのその馬鹿菌も一緒に洗い流しちゃいなさいよ!」

「リリィ、良く言えたもんやな~。お前のその可愛げのない口も、俺がまとめて洗ったるわ!」

「なんですって~!」


まぁた始まった。



私とアキはそんな二人をよそに、目的のサンマルコ広場へと真っ直ぐに歩みを進める。

確かにアキの側によると、いつも香る爽やかなハーブの香り

とても頭がスッキリして心地いい。


「ねぇ、さっきの“メリッサ”って?」

「あぁ“レモングラス”って言った方がわかるかな。レモンの香りのするハーブなんだけどさ、母さんが好きなんだって。匂う?」

「うん、いつもアキに近づくと、いい香りがするなぁって思ってた」

「そう。それは母さんも喜ぶな」

「素敵なお母さんなんだね」

「あぁ。専業主婦だからさ。それに俺のうちは男兄弟しかいないから。家であれやこれや一人でやってるよ」

「そっかぁ」





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