再会


「なんや、実際見ると、ちょい寂しい所やな」

「だから余計にアノ言い伝えが信憑性があるんじゃない?」


そう、私たちは映画でも最も印象的なシーンで登場した“真実の口”の目の前までやって来たんだ。

本来は古代ローマ時代のマンホールの蓋だった、とも言われているが真実は不明なのだとか。


「言い伝えって、あれ?“嘘をつくと手が抜けなくなる”っていう」

「うん、あのシーン、私好きなんだ」


映画と同じ真実の口を目の前にして、テンションが上がる私とは反対に、リリィの表情は浮かなかった。


「どうしたの?リリィ」

「あたしには無理よ」


リリィはそう呟くように言ったんだ。


「どうしたんや、リリィ?なんや、隠し事でもしてるんか?」


ジュンは相変わらず屈託なく言うけど、リリィの表情は晴れない。


「あたし、嘘つきだもん……。きっと手、抜けなくなるかも。なーんてね」


リリィ……



「キャッ!ちょ、ちょっと、ジュン、なんなのよ」



みんなと少し離れて立っていたリリィの手を、ジュンは掴み、真実の口の前まで強引に引っ張ってきた。

そして、そのまま、その手を自分の手と一緒に口の中に勢いよく突っ込んだんだ。




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