再会
「ブイヤベースって、日本じゃ高級料理だけど、なんだかこの街の素朴さを見てると違うよね」
「あぁ、そうや。あれは元々、漁師料理やからなぁ。売り物にならん魚をなんでも放り込んで食べる家庭料理やったらしいで」
「そうなんだ」
するとアキも市場の活気に負けない明るい声で付け足した。
「ニースの方だとトマトも入るらしいけど、発祥のマルセイユではサフランのシンプルなスープが主流なんだって」
「へぇ~、二人とも、本当よく知ってるよね」
ジュンもアキも、とにかく物知りだ。
歴史から地理や観光情報はもちろん、ジュンは音楽や機械について、アキはデザインや絵画、インターネットについてと、とにかくいろんなことに詳しかった。
二人と一緒だと専属のガイドがついてるような気分だ。
お昼時を前に、通りかかるビストロからは食欲をそそるいい匂いが漂ってくる。
サフランの独特の香りに、魚介のダシが効いているのだろう。
プロバンスでは香辛料を多様するのも料理の特徴のようで、あちらこちらから鼻腔をくすぐる美味しい匂いが立ち込めていた。
お腹はいっぱいのはずなのに、まだ食べれそうな気さえしてくる。
今日の晩御飯は絶対ブイヤベースに決定だ。