再会
早めの昼食を終えた私たちは、旧港の中央部ペルジュ河岸から遊覧船に乗り込んだ。
目指すは船で15分の所に浮かぶイフ島だ。
元々はマルセイユの港を守るための要塞“イフ城”が建てられた小さな島だ。
やがてその役目がなくなると、イフ城は政治犯や死刑因を収容する監獄に変えられてしまったそうだ。
この島が有名なのは、アレクサンドル・デュマ・ペールが書いた『巌窟王』の脱走劇の舞台だからだろう。
今なお世界中から大勢のファンが足を運ぶ、人気の観光スポットだ。
底が見えるほど透き通った海に、その島は静かに浮かんでいた。
そこに建つ白い城の中を歩くと、監獄だったというだけあって、空気がひんやりしている。
それにお化けでも出そうな、そんな霊的な気配も感じて、心が落ち着かなかった。
最上階まで昇ると、そこからはマルセイユの市街地を臨むことができた。
海から眺める街の風景は、また違った美しさを放っていた。