再会



今までは、自分の前に敷かれたレールを、ただ進んでこればよかった。

子供の頃から、親の言うことを、素直に聞いていればいいと思っていた。

高校受験も大学受験も父親の言う通り、そこそこ名の通った学校に入れば、満足してもらえた。

そこに、私の意志なんてなかった。

気にしたのは、父親の世間体だけ。



私が10歳の時に、母親は浮気して出てったらしい。

それから、私は父に引き取られ、祖母に育てられた。

母親がいないことを、負い目に感じないようにと、父は教育には熱心だった。

でも、私は気付いてたんだ。

父親の興味は、あくまで世間体で、私自身ではないことに。

でも、私はそれでも良かった。

父の期待に応えて、父に自分が頑張ってると思ってもらえるだけで。



でも、それまでそんな生き方をしてきたものだから、特にやりたいこともなく、夢なんて私には必要ないと思っていたんだ。

適当にいい会社に入り、父親の満足する結婚をし、子供を産む。

その程度の漠然とした未来を想像してみるけど、なんだかしっくりこなくなった。

そんな将来を、自分は本当に望んでいるのだろうか。

これから私は、どうなりたいのか。



その答えなんて、いくら考えても出てこなかったんだ。



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