再会
旅を始めて早くも九日目
初めの頃は、警戒心も剥き出しで、パスポートやら財布やら大事なものを入れた大きめのウエストバッグは、必ずお腹の前に回して、必死で守っていたものだ。
それが、慣れてくると、どうだろう。
特に、ドイツ人の親しみやすい人柄だか、お国柄だかが、そうさせるのか。
私の心には、安心感のようなものがあって、いつしか警戒心は薄れていたんだ。
ウエストポーチは後ろに回し、手にはインフォメーションでもらった地図。
夏だと言うのに少し肌寒いここでは、ハーフパンツにウィンドジャケットを羽織っていて、いかにも旅行客というスタイルだ。
駅前からまっすぐ伸びるカイザー通りの周りは、高層ビルが立ち並ぶビジネス街だ。
観光スポットの旧市街は、その奥にある。
ビルの間からは、今日も、晴れ渡る空がのぞいていた。
建設途中のビルもそこかしこにあり、フランクフルトの近代的な一面をのぞかせている。
私は、メイン通り以外のところも歩いてみたくなって、小さな通りを寄り道しながら旧市街を目指した。
ビジネス街なんて、もちろん日本でも見慣れてる。
だけど、普通と思える町並みにも、日本とは少し違う建築物や、ショーウィンドウのディスプレイに興味を惹かれ、私はいたるところで立ち止まっては、見入っていた。
だけど……
あちらこちらで心を奪われていた私は、不意に右腕を引っ張られ、体の自由を奪われたんだ―――