再会


私は、甘いシナモンの香りに誘われるがままに、一軒の露店の前で立ち止まった。

たくさん並べられたマグカップ。

日本のそれより少し大きめで、側面にはここのクリスマスの風景と“2008”の文字が刻まれている。


「一杯ください!」


顔には深く皺が刻まれた柔らかい笑顔のお婆さんは、大きなマグカップにたっぷりのグリューワインを注いでくれた。


「これは私の秘伝のレシピだから、ここらで一番おいしいよ!」と手渡してくれた。


これは、ドイツのクリスマスには、なくてなならないものだ。

赤ワインにシナモンやクローブなどの香辛料、それにオレンジピールやレモンピールを入れ、さらに砂糖やはちみつで甘みをつけ温めたホットワイン。

グリューワインのお店は、このマーケットの中に何件もある。

お店によってマグカップのデザインや、味そのものがオリジナル。

だから、好みのお店を探すのも楽しそうだ。







< 99 / 319 >

この作品をシェア

pagetop