【てぃんかーべる】
「ねぇ
 夕方の電話なにっ?
 喧嘩売ってるわけっ?
 いちおあたし客なんだけどさっ」

節操なく声をあげる胡桃に
俺は冷静に対処する

「でも
 こうして逢いにきてくれた」

「そりゃくるわっ
 自分から腹減ったとか
 いっといて
 他の女と飯喰うとかいわれたら
 ムカつくじゃんかっ」

「だよな……」

「だよなって
 それだけかよっ
 舐めてんのお前」

「ひとつ
 いっていいか?」

「なによっ」

「好きな女と飯喰うときは
 ゆっくりしたいだろ」

「はぁ?」

「今日は
 出勤まであまり時間なかったしな
 お前と飯喰うときくらい
 甘い時間を過ごしたいんだよ」

「………」

「胡桃と一緒にいるときが
 一番楽しいからな」

「だからって……
 他の女と食事するんだ…」

「どうでもいい女だよ
 お前だけじゃ
 ナンバー入り難しいからな」

「………」

「くるみ?」

「じゃあ…
 あたしがもっと働いて
 きつねに注ぎ込んだら…
 そしたら他の女と切ってくれる?」

「注ぎ込むって何だよ
 お前が顔見せてくれるだけで嬉しいのに
 俺たち付き合ってんだろ?
 No.1になって
 借金もなくなれば
 お前と結婚したいとも思ってるし
 そんな女に金を使わせたくないぜ全く」

「ほんとに?」

俺は彼女の頭を撫で
くるみ好きだよと
ほほ笑みを含ませていった

この単細胞の
機嫌をとることなぞ
造作もない
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