【てぃんかーべる】
寝る間もなく
野田に呼ばれ
事務所に向かった

「あれ?
 寝たの?」

通路で
『南 恭子』が
声をかけてきた

「いや、そのままきた
 目がしぱしぱする」

恭子さんは
スーツの襟元を正しながら
俺の胸元に
そっと頭をのせた

「最近満足に寝てないんでしょ?
 大丈夫?
 身体壊さないでね
 き・つ・ね・くん」

彼女は俺の風貌を見て
いたずらな笑みを浮かべた

恭子さんに
野田の居る場所を訊く

「いつものとこ」

いつものとこね……

俺は屋上に向かった

彼はベンチに腰掛け
ホットドックを頬張っていた

『野田 宗二朗』

ホストクラブ
『ガラスの靴
 忘れてませんか?』
のオーナーだ

彼と出会ったのは
二年前になる───

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