【てぃんかーべる】
わたしが野菜切ってる間に
父は豚キムチを炒めている

「ねぇ
 お父さん」

「あー?」

「あの時のこと
 どう思ってる?
 わたしが……
 再婚に反対して……」

「どうした
 いきなり」

父は苦笑した

「ん。いや、なんかさ」

「つかさに反対されてまで
 結婚したくなかった
 それだけだよ」

「わたし……
 お父さんの人生をさ
 制限したっていうか
 幸せを奪ったような気がして」

父はわたしを見た

「お前がそうやって
 考えてくれただけで
 嬉しいよ
 お父さんの幸せは
 つかさが幸せな人生を
 歩んでくれることだな」

「……かっこつけないでよ」

「ははっ
 バレたか?
 野菜切れたか?
 次チャーハン作るぞ」

…………

「お父さん」

チャーハンを炒める
父の背中に声をかけた

「んー?」

「ひとりでさびしくない?」

「なんだぁ?
 つかさ、お前一人暮らしして
 ホームシックになったのか?」

「うん
 わたし毎日ホームシックに苦しんでるよ
 お父さんと離れてさびしいから」

「そっかそっか
 まぁ、さびしくなったら
 いつでも帰ってこい
 お父さんはいつでも
 つかさを待ってるからな」

わたしは胸の内で
ありがとうと呟いた

「お父さんの介護は
 わたしがちゃんとしてあげるね」

「うんこの世話も頼むな」

「汚いなぁ~」

わたしと父は互いに
笑い合った

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