【てぃんかーべる】

───やめたい

常軌を逸した
いまの仕事を辞めたいと
思ったのは
目も眩んだ借金を完済した頃

同時に
『南 恭子』
と親密な関係を
持ちはじめた

金のためなら
他人を蹴落とし
女の嘆く様を
糞とも感じていなかった
くすんだ己を
冷静に見つめだす

すぐに
自身の過ちに
生唾をのんだ
後悔の芽が
ゆるりと育ちだした

それが
胸の中で止まらないほど
成長しはじめたのは
『橋本 英理』の
「たす…け…て」という言葉を聞いたときだ

なぜ
彼女を助けてやれなかったのだろう
過去の少女たちもそうだ
AV業界に入れられ
薬に溺れ
外国に売られた彼女たち

俺の
目の前で犯され
殺され
捨てられる女たち

それらすべてに
荷担している自分

過去の罪が
ノイズとなり
頭のなかで
警告音のように
鳴りはじめた

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