【てぃんかーべる】
「崖に落ちて…
 俺と
 このまま心中するか?」

俺は
自嘲ぎみな笑みをこぼした

荒くれる車
何度かガードレールに
ぶつかりそうになる
タイヤの摩擦音が
深夜の山道に響く
対向車がくれば
確実にアウトだろう

「わたしは死ねない」

ねるが
初めて声を発した

「あんたとは違う……
 あたしには夢がある
 夢をかなえるまで死ねない」

声は震えていたが
力強い口調だった
もしかしたら
死ぬかもしれない
という状況の中

彼女の
言葉は
意志は
何事にもゆるがない
それを感じさせた

俺は
『夢』という言葉に
奥歯を強く噛みしめた
< 179 / 275 >

この作品をシェア

pagetop