【てぃんかーべる】
事務所に着いたとき
すでに東の空は
あかね色に
にじんでいた

ねるは
なにもいわず
車から降り
足早に立ち去った

彼女の後ろ姿を
みつめていた

なぜ彼女に
心の葛藤を
吐露してしまったのだろう───

俺は
この世界に
根深いところまで
足を踏み入れてしまったのだ

いまさら
かたぎの仕事に戻れるなどと
考えちゃいない

しかし
庵 ねると
同じ空間に身を置いているさなか
根底に眠る
罪の意識が
目を覚ましてたことに
俺はきづかない『ふり』をしていた

デビュー前
『庵 ねる』が
まだ
『水森 つかさ』であった時
彼女を犯した
さらに彼女の膣内で果て
ビデオ撮影までする
鬼畜のような
行為をされたのにもかかわらず

彼女は
『夢』という
輝ける目的をもって
前向きに生きている

そんな彼女が
俺には
まぶしすぎた

同時に
罪悪感が
加速度を上げて
ふくらんでいった
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