【てぃんかーべる】
おっと…
これから会合だったな

内線で
車をだしておくように
指示した

通路で
女が男の胸で肩を震わせていた

私は
男女の横を
通りすぎようとすると

男が話しかけてきた

「君島 沙也加を
 売ったそうですね」

「最近
 よくその格好で
 事務所にくるみたいだな
 きつね」

『流川きつね』は
私を
まるで親の敵かのような
まなざしでにらんでいる

「いいの……」

きつねの
胸で泣いていた
『南 恭子』が
充血した目で
きつねを止めた

「恋愛ごっこは
 私の見えないところで
 してほしいもんだな」

そう言い残し
私はエレベーターに乗り込んだ
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