【てぃんかーべる】
「ひつじ
 いつまでこんな生活
 してる気なの?」

いつも
食事を作ってすぐ帰る
南 恭子が
話しかけてきた

あたしは
彼女の言葉を無視し
バナナを喰ってる

「ひつじ」

彼女は
あたしの正面に坐り

「がんばろ
 ねっ
 自分に甘えるのは
 もうやめよ」

あたしは
彼女の目をまっすぐ
見ることが
できなくなっていた

「うるさいな
 うざいんだけど
 あんたのつくった飯なんて
 喰わないし
 ゴミ箱行きなのに
 よく毎日性懲りもなく
 作るよね
 バカみたい
 死ねって感じ」

「悲観してるだけじゃ
 前に進めないのよ
 仕事すごく頑張ってたじゃない
 あなた」

「うぜっ
 てかもうどうでもいい
 つか死にたい
 あんたはいいよね
 美人で性格よくて
 キャリアウーマンでさ
 順風満帆な
 人生おくってるって感じぃ~
 あほんだら
 くそぼけ」

あたしはそういって
大きく口を開ける
咀嚼でぐちゃぐちゃになった
バナナを
これ見よがしにみせつけた

あたしの行為を
真正面で黙ってみていた彼女が
すっと立ち上がり
台所に向かった

包丁を手に取り
あたしの目の前に
力一杯たたきつけた
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