【てぃんかーべる】
南 恭子が
厳しい目つきで
あたしをみつめた

「死にたいなら
 死になさい」

そういって
包丁を指差した

「人生は辛いことの
 くり返しよ
 それでも
 生きていかないといけないの
 死にたいなら
 それで手首を切りなさい
 本気で生きるか
 人生捨てるか
 どちらか選びなさいっ
 いつまでも
 甘えないでっっ」

彼女の
怒った表情を初めてみた
すごく熱意がこもった声
親からももらったことのない
愛を感じた

なんか
目の奥が熱くなった

でも……

あたしは
すっと包丁を手にした

「あんたに
 あたしの気持ちはわからないから」

ゆっくり
それを手首にあてた

南の表情は
依然険しい

グッと
力を込めて
手首に押し当てる

あたしは
おもいきり
包丁を引いた
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