【てぃんかーべる】
ファーストフードから
出てからも
あたしはブルーな気持ち

「あっ
 くるみみてみてっ
 あそこに『KIKI』できてるよっ」

つかさが交差点の
向こう側にあるショップを
指差した

あたしの感情を
知ってか知らずか
彼女は明るく振る舞う

「…ほんとだ」

「いってみよ
 わたし服買うから
 一緒にえらんで
 ねっ
 いこっ」

つかさに促され
服飾店に向かう

歩行者信号が赤なので
あたしらは立ち止まった

「ねぇ…
 くるみ」

「ん?」

あたしはつかさをみた
彼女はまっすぐ前を見ながら

「つらいことが遭ったら
 いってね
 わたし…
 力になるから」

信号が青になると
つかさはつかつかと
先へ行く

『仕事』

『家族』

『きつね』

『南 恭子』

彼女と一緒にいると
ボロボロに凍てついた
あたしの心を
柔らかく溶かしているみたいだ

つかさに
優しくされると
あたしは
改めて自分の器の小ささを知った
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