【てぃんかーべる】
家に帰ると
父はまだ帰宅してなかった

わたしは
幽霊のような足取りで
自室に向かった

涙が
なかなか止まってくれなかった


妊娠

赤ちゃん

自分がお母さん

名も知らない父親

子育て

堕胎

命の尊さ


脳裏に
様々な想いがかけめぐった

ベッドに身をおとす
ぎゅっと枕を強く握りしめ
壁に向かって
放り投げた

『なんで中に出すのよ』

そのおもいだけが
頭の中で何度も
巡り続けた

茶髪が
憎くて仕方なかった

くやしい
くやしい

血がにじむほど
腕を強く握りしめ

親指の付け根を
おもいきり噛んだ

何度も寝返りをうつ

どうしても
このイライラした気持ちが拭えなかった

どうして中に出すの───

私は布団にもぐって
身を九の字に曲げ
号泣した


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