【てぃんかーべる】
太股から
止むことなく流れる血
カーペットに地図を描いていく

ホントは飛び上がりたい
のたうち回りたい
それくらい痛い

でも焦心感が
太股の痛みを凌駕する

痛みで
すべてが忘れられるほど
人間て都合よく
つくられてないんだね

薄暗い部屋を
意味なく眺めてたら
変な染みを見つけた

あんな染み
いつからあったっけ

半開きの口で
しばらく
その染みをじっとみていた
焦点は合ってない

なぜか痛みは蚊帳の外

「そろそろ死のっかなぁ」

あたしは
唇を動かさずにいった

太股から包丁を抜き
それを首にあてがう

当然のように
恐怖はない

思い出す
想い出もない

別れを告げる
相手もいない

あたしって
一体どんな理由で
生まれてきたんだろ

……ふっ

わずかに
口端をあげて笑い
よだれをすすった

あれ…
今日夕飯あったっけ?
つか食べたっけ?

あ……
今日って月曜?
ジャンプじゃん
ワンピース読まなきゃ
いま盛り上がってんだよね

ははっ……

べつに
どうでもいっか……
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