【てぃんかーべる】
事務室内の白色灯を
虚ろに眺める

ドアが開き
赤木が入ってくるや
おぉっ、と巨体をびくつかせた

私の露出した下半身に
驚きを隠せないでいる

眼球のみ動かし彼をみた

「オ…オーナー」

まんじゅうでも
喰っているかのような声だ

私は彼にかまわず
電灯に目をやった

自慰行為の後は脱力感でいっぱいなのだ

赤木を完全に無視する

「し……失礼しました」

彼は状況を汲みとり
頭を深く下げ
室内からでていった

スーツの内ポケットで
携帯が振動している

無意識に振動の回数を数える

十二回で震えが止んだ

ひとつ大きな深呼吸をする

タバコに手を伸ばす前に
携帯の着歴を覗く

……文哉か
あいつからの電話
めずらしいことでもあるものだ

今年で十五才になる文哉

艶やかな髪質
透明感のある白肌
中性的な雰囲気

女装すれば
アイドルに見間違うほどの美貌をもつ少年

義務教育は受けさせていない

何年も外出を禁止させている

下水道のような汚れ腐った
現代社会を露ほども知らぬ
私だけのティンカーベル
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