【てぃんかーべる】
「肉っ」

「肉ってなによ。
 料理名を言わないとわかんないし」

「じゃあ、豚キムチ」

「ファイナルアンサー?」

「え?
 みのさん?
 つか古いんだけど」

私は真剣な顔で
もう一度ファイナルアンサーといった

「じゃあファイナルファイバー」

「ファイバーってなによ
 意味わかんないし」

私は
ぷっ、と噴き出した

「今日どうだった?」

頬杖をついて
彼の顔を眺める

「どうって?」

「バイト」

「小西くんがさ……」

「小西くんて
 ジャイアン?」

「そうそう
 講義中にうんこ漏らしちゃってね」

「えっ
 五年生だよね?」

「体型はジャイアンだけど
 心はのび太くんなんだよ」

「えっ、それで
 どうしたの?」

「ん
 いや室内がなんかくさいと思ってさ
 講義進めながら
 うろうろしてたらさ
 臭いの元凶は小西くんなんだよ
 周りもざわざわしだしてさ
 だから俺
 小西くんに耳元で
 トイレいっといでっていったんだよ」

私は彼の言葉に
なんどもうなずいた

「じゃあさ
 小西くんがさ
 とぼけるわけ
 とぼけるっていうか
 ぼくうんこ漏らしてませんって
 表情すんだよ
 あきらかに
 彼の中心でうんこが叫んでんだぜ?」

私は声を出して笑った

「しょうがないから
 そのまま講義進めたよ」

「えっ
 そうなのっ」

「だって認めないし
 トイレにも行かねーんだもん」

「ふぅーん
 でもさ
 ある意味根性あるよね小西くん」

彼はカルボナーラをすする

「まぁね
 彼のパンツの中は
 水風船が破裂したような状態なのに
 涼しい顔で講義受けてたしな」

「お尻はさぞ
 きもちわるかっただろうね」

私がにがい顔でいう

「うん
 そして痒かっただろう」

彼が応える

私達はなぜか
小西くんの
勇気と根性を祝して
ウーロン茶で乾杯した
< 39 / 275 >

この作品をシェア

pagetop