【てぃんかーべる】
「すいません」

と奇怪に笑う三村の
口許から橋本 英理の
指の爪先がみえた

指を喰ってやがる───

『三村 耕吉』
こいつも困ったやつだ

仁が
全裸で力無く横たわる
橋本 英理を診ている
彼女の足首に
脱がされた水着がひっかかっていた

私は
口許が半開きで
全く動きを失い
放心した彼女の顔をのぞき込んだ

右目は紫に腫れあがり
閉じた状態になっている
鼻は陥没し
前歯が数本折れている
前髪はむしられたのだろう
不自然に禿げていた

橋本 英理の美しく
愛くるしかった顔は
醜く腫れ、ゆがんでいる

身体中に
紫や赤の滲んだ斑点が
無数に広がる
右手の一差し指と中指が欠けて
骨が見えていた
彼女の股から
精液に混じって
濁った血が垂れてた

「ん?
 この娘生理だったのか」

私が三村に訊いた

「いや
 気持ち良くさせようと
 指でがりがりいじくってたら
 中から血が出てきちゃって」

三村は
口をもごもご動かしながら
汚く伸びた爪をみせる
中には黒い垢が
びっしり詰まっていた

「血のお陰で
 ぬるぬる感は最高でしたけどね」

髭を触り
彼はひひひひと
顔をゆがめて笑った
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