【てぃんかーべる】

「たす…け……て」

過呼吸で苦しんでいる
橋本 英理が
わずかに唇を動かしていった

「お、意識あったか」

私がいった

「たす……けて……くだ…さ……」

彼女は目に涙をため
必死に言葉をしぼり出している

腫れてふさがった右目からも
涙がこぼれていた

声を漏らし泣いている

陥没した鼻は赤黒くまみれ
彼女が呼吸をするたび
口許から血が垂れる

美しい形をしていた乳房は
紫に色を変え
左の乳房が腫れ上がり
左右の大きさが異なっている

おもわず唾を
吐きかけたくなるほど

彼女はすでに
家畜と化していた

『生きる価値のないゴミ』

そう胸の中で呟いたとき

私は
おもわず
笑みをこぼしていた
< 61 / 275 >

この作品をシェア

pagetop