【てぃんかーべる】
三村が
橋本 英理の耳元に近付き言った

「あのねっ
 聞こえる?
 君はね、死ぬの──」

そういうと
ぶほっ、と声を出して笑った

「それでね
 海に捨てられるの
 わかる?
 し・ん・で・
 す・て・ら・れ・る・の」

彼女の耳に口をつけて
良く聞こえるように
三村は
小学校低学年の子どもように
喜々として喋った

「まっ
 そういうことだな」

私もいう

はっはっはっはっ
呼吸を荒げ
泣き続ける
橋本 英理は

「いや……いや……」

首を横に振り
生への切願を示し

「たす…け……て…
 ……智…史………
 さ…とし…………」

大粒の涙を流しながら
我々の知らない男の名前を呼び続けた
< 62 / 275 >

この作品をシェア

pagetop