【てぃんかーべる】
伏見埠頭
近隣の住民は誰も近寄らない
忘れられた埠頭と呼ばれる

仁が
トランクから
硬直した橋本 英理の遺体を出すと
抱きかかえ
三村が埠頭まで乗ってきた
クルーザーに向かっていく

彼は遺体になにかを呟いている

…………すまない
という言葉だけが聞き取れた
私は黙っていた

「三村、
 適当なとこに沈めておけ」

「あれ?
 火草行かないの?」

停船するクルーザーに乗る
三村は
仁から遺体を受け取ると
きょとんとした面持ちで訊く

「えぇ
 今日はちょっと……」

「三村、一人で大丈夫だろ」

私がいった

「えー。
 今夜こそ
 火草に死姦の極意を
 伝授してやろうと思ったのに」

そういうと三村は
冷たくなった橋本 英理の
白く硬直した頬に舌を這わせ
弾力のかけらも失った
乳房を揉んだ

三村は
死体を犯し
そのあとで一部を食すという
性癖をもっている

彼の性癖は一般レベルとは
まるで次元がちがう

私でも一歩引いてしまうほど
冷徹で恐いもの知らず
そして弩級の変態だ

仁から聞いた話だと
眼球と大腸を好んで食すらしい
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