【てぃんかーべる】
夕方。帰宅すると
お父さんがチャーハンを作っていた

「ちょうど良いとこに
 帰ってきたな
 つかさ、腹減っただろ?」

「うん
 チャーハンにピーマンいれないでね」

「了解」

わたしはソファーに坐り
テレビをつけた

アイドルのこと
お父さんに言わなきゃ
駄目だよね

「お父さん、
 もしさ、もしもね
 わたしがアイドルに
 なったらどうする?」

「アイドル?
 いいんじゃないの
 お前がやりたいようにやれば」

お父さんは
あまり興味なさげに
チャーハンを頬張りながら答えた

お母さんが死んでから
もう五年が経つ

父娘の二人三脚
よく喧嘩もするけど
自動車の部品工場で二十年間
一生懸命働き
大学にまで通わせてくれて
いつも明るく元気なお父さんが
わたしは大好きだ

わたしがやりたいといったことに対して
今まで一度も反対された経験はない
お前のやりたいようにやれ
俺はお前が幸せになってくれたら
それで満足だ
いつもその言葉をいってくれた

無愛想で人付き合いも苦手だけど
なにより
わたしのことを想い
尽くしてくれる

いつも父に
感謝の念を抱き
敬愛していた

いつか
お父さんを幸せにしたいと思っている

< 78 / 275 >

この作品をシェア

pagetop