エリート専務の献身愛
あめ玉と絆創膏
真っ暗な中、遠くにぼんやり光が見えた。
重い足を引きずるように光を目指すと、そこには彼の背中が見える。
――これは夢だ。
そう気づいたものの、胸が潰れるほどの苦しさはあまりにリアルで顔を顰める。
ああ。そうだ。彼が私の前から去ったのは、夢じゃない。現実だった。
差し出してくれた手を取ることができず、俯いていた私。
彼は、私が拒絶していると受け取ったのだろう。当然だ。
ひとこと、『わかった』と言って、私に背を向けて行ってしまった。
あのとき、すぐに追いかけていたら手は届いたはずなのに。
彼の名を呼べば、足を止めてくれたかもしれないのに。
彼との距離が、もう近づくことは、きっとない。
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