エリート専務の献身愛
 ドアマンを横切り、入口を通過し、広いロビーに立つ。

 天井は高く、キラキラと星が瞬いているようなシャンデリアが私たちを見下ろしている。
 教会のような厳かな雰囲気のロビーに、これ以上奥へ足を進めることに気後れしてしまう。

 だけど、浅見さんの温かく力強い手によって、一歩、また一歩と歩いていく。

 浅見さんに連れられ、きょろきょろと辺りを見回していると、案内プレートを見つけた。私たちが向かっている先は……ブライダルサロン?

 目を疑うような単語に、思わず浅見さんの背中を凝視する。

 まさか誰かの結婚式とか……いや、そもそも式ならサロンには向かわない。
 式場の見学とか、そういうことでしかブライダルサロンって用事はないところなんじゃ……?

 全然状況が把握できないうちに、ブライダルサロンに着いてしまった。
 彼は私の手を握ったまま、もう片方の手を金色のドアノブに伸ばし、躊躇することなく押し開けた。

 ドアが開いたのと同時に、チリン、と高く上品な音色が鳴り、「いらっしゃいませ」と女性スタッフがやってくる。

 いったいこれはどういうこと?

 不安な気持ちでいる私をよそに、浅見さんは一度手を離し、スタッフとなにやら言葉を交わしている。すると、女性の目線が突然私へ向いた。

「お待ちしていました。どうぞ、こちらへ」
「えっ? あの……」
「お電話で聞いていたとおりの方ですね。背も高くて、華奢なのでドレス映えしますね、絶対」

 笑顔でやたらと褒められても、まったく喜ぶ余裕がない。
 狐につままれた心境で、女性と浅見さんを交互に見る。

「行っておいで。大丈夫だから」

 浅見さんは悠然と答え、微笑むだけ。
 私は女性に案内されるがままに、奥へと入っていった。

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