エリート専務の献身愛
上階のレストランへ入ると、そこでまた見たことのない景観に驚く。
まるで絵画のような、花が添えられたテーブルに食器。そして、やはりなんと言っても、足元から天井までの大きな窓から見渡せる夜景。
キラキラした世界に圧倒され、席に着いてから出されるワインや料理の味に集中しきれない。
目の前には終始楽しそうに笑っている浅見さん。
正直、私には浅見さんのように笑う余裕なんてない。なにか失態を犯すんじゃないかと緊張感でいっぱい。
……でも、夢の中にいるみたいで、緊張とは違うふわふわドキドキが私の中に存在している。
「今、一生ありえないようなことを体験してます……。仕事の疲れなんか飛んじゃうくらい」
もしかしたら、ほかの女の子だったらこういうときは、うれしいのがひと目でわかるくらいに笑みを零して、『美味しい』とか『素敵』とか可愛く言うんだろうか。
それに比べ、私は未だに場に慣れなくてガチガチ。料理を『美味しい』と素直に感じられる余裕もなくて、ムードのない言葉しか出てこない。
それでも、浅見さんは嫌な顔ひとつせず、白い歯を見せる。
「瑠依は今の仕事、好き?」
可笑しそうにクスクスと面白そうに笑って聞かれる。
こんなに素敵な場所で、『仕事の疲れ』とか言っても怒らないのって、世の男性のなかで浅見さんくらいじゃないかと思ってしまう。
けれど、その寛容さがやっぱりありがたくて、温かくて。