エリート専務の献身愛
やってしまった。考えてみたら朝帰りなんてしたことない。
早朝に自宅にタクシーで帰宅し、バタバタと出社の準備をする。洗面所の鏡に映る自分を見て、ふと思った。
元カレの家に泊まったことはある。でも、翌日仕事という状況はなかったし、三か月も経った頃にはほとんどうちだった。
もう朝帰りの罪悪感を感じるような年頃じゃないよね、きっと。
それでも、どこかドキドキとして、化粧を済ます。
浅見さんはやっぱり完璧で、今朝も目覚めたらすでに起きていて身支度を終えていた。
寝顔を見られたのは私だけ、か……。
髪をセットしていた手をゆっくり下ろし、ぼんやりとする。
昨日は本当、シンデレラにでもなった気分だった。至れり尽くせりで、物語のように出来すぎというくらいのデート。
浅見さんと一夜を共にして幸せを感じる一方で、ふっと気づいた。
私、彼のことをほんの少ししか知らない。
好きだという気持ちはきっともう変わらない。でも、好きだからこそ知りたい。
「焦りは禁物。仕事も一緒!」
なんでもそう。欲張ったりすると、うまくいかなくなることが多い。
まるで、他人に諭すように鏡の中の相手に呟き、慌ただしく家を出た。