エリート専務の献身愛
 好きな人と抱き合う時間は幸せ。

 でも、けじめはつけなくちゃと思った矢先、浅見さんがズルズルと倒れ込んでくるから驚いてしまった。

 まさか、寝てる……?

 頭だけとはいえ、寄りかかられると結構重い。慎重に支えて、そっとベッドに寝かせる。

「うそ……」

 意外な展開に目を丸くする。
 完璧な彼だと思っていたこともあって、こんな気の抜けた展開が待っているだなんて思うはずもない。

 ちょうど真ん中あたりに腰を掛けていてくれたおかげで、足もベッドに乗せてあげることができた。
 それでも起きないところを見ると、相当疲れているらしい。

 布団を掛けてあげたいけれど、浅見さんの下敷きになっちゃってるし……。

 きょろきょろと辺りを見回すと、浅見さんが脱いだであろうスーツの上着が目に付いた。それを手に取って浅見さんに掛けてあげようとした瞬間。

「……あれ?」

 ふわりと鼻腔を擽る爽やかな香りに動きが止まる。
 私は浅見さんに掛けてあげる前に、思わず鼻を上着に近付けていた。

 どこかで知っているような……?

 記憶を手繰り寄せるけれど、浅見さんが小さく声を漏らし寝返りをうったので集中できなくなってしまった。
 それから改めて上着を身体に掛けてあげる。

 ポケットやカバンを探っても、結局いつものクセで持ち歩いていた飴くらいしかない。落胆しつつ、それだけでも、とパソコンの横に置いてメモを残す。

【糖分取ると、少し疲れが緩和されるかもしれません】

「よし、と」

 書き置きを残し、そっとベッドを通り過ぎようとした。そのとき。

< 128 / 200 >

この作品をシェア

pagetop