エリート専務の献身愛
 翌日の金曜日。今日を乗り切れば週末だ、といつものように言い聞かせるものの、士気はあがらない。
 原因はわかっている。昨日の夜にレナさんに言われたことだ。

 仕事に差し支えるって、要するに邪魔だってこと。

 本人からそう言われたわけじゃないけれど……。
 仕事が終わらなかったこととかも、前日に私と会っていたからかもしれない。

「あっ、城戸さん! もう聞いた!?」
「おはようございます、真鍋さん。なんですか?」

 出社するなり、一番に来ていた真鍋さんが寄ってくる。
 まだ誰もいない部署なのに、彼は声のトーンを落として話始めた。

「うちの会社、整理解雇するしないって噂あったのは知ってる? その通告いつくるのかなーなんて、ほかのやつらとたまに話してたんだけど」
「あぁ……」

 そういえばそんな話、小耳に挟んだことあったな。

 床をみながら思い出して小さく頷く。

「そうしたらさ。関係あるのかないのか知らないけれど、部長が退職決まったって知らせが回ってきて」
「え!?」

 今まで噂とか、かなりあやふやな話題だったものが、いきなり具体的な内容でびっくりしてしまう。
 目を大きくして真鍋さんを見る。

「退職推奨なのかどっちかは、わかんないんだけど」
「部長は? 直接聞いてみたら……」

 部長、朝はわりと早めに来るはずだ。

「今日は有給取ってる。いやーでも、定年まで約十年くらいあるのに、自分から辞めるかなぁ」

 真鍋さんが両手を頭に添え、くるりと背を向ける。

「なんだかんだ理由つけられて、体のいいリストラだったとしたら明日は我が身だな。怖い怖い」

 そう言って身震いしてみせると、デスクに戻って仕事の準備を始めていた。
 私もデスクについて、なによりも先に社内メールのチェックをする。

 見ると、今真鍋さんから聞いた通りの通知が来ていてショックを受けた。
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