エリート専務の献身愛
彼と彼氏
休みの前日は、なるべく早く帰るように心掛けている。
いつもよりちょっと時間に余裕を作って、夜ご飯を準備する。
平日、ひとりきりの時は冷凍食品やレトルト、お惣菜によくお世話になっているから、せめて。
とはいえ、手の込んだものを用意するほどの気力もないから、手軽にできるものばかり。
今日は親子丼と味噌汁だけだったけれど、味はまあまあだったと思う。
そんなことをぼんやり考えながら、ふたり分の食器を洗う。
蛇口をきゅっと捻って水を止め、調理台周りを綺麗に拭いた。
「あ、私、明日休みだよ」
振り向きながら言うと、そこにはさっきと変わらずラグの上に横たわっている由人くんがいた。
彼は、手にリモコンを持ってテレビを見ていて、私の方に顔を向けようともしない。
「ふーん。じゃあ買い物でも行く?」
「だったら私、靴屋さんに行きたいな」
それでも返事をくれるだけマシか。
なんて、まだ二十代半ばで、付き合って二年も経っていないというのに熟年夫婦みたいな諦めはなんなの。