エリート専務の献身愛
そうなんだ。そんなに前から、レナさんが言っていたインフラ改革っていうのを準備していたのかな。
でも、社内に出入りしていたのには知らなかった。こんなに端整な顔立ちだから、もし見ていたら忘れるわけないし、顔を合わすことがなかったんだろうな。
一年前を遡るも、まったく浅見さんのことは思い当たらなかった。
「男性社員が言うには、『社会は、親が立派だとそれだけで得するようになっているんだ』っていうようなことを話していた。正直、耳が痛かったよ」
「えっ、その話は……」
「うん。たまたまだけどね」
偶然にもほどがある。
浅見さんは、平然を装っているけれどやっぱりそういうこと、気にしているのに。
だいたい、なんでわざわざ社内でそんな話題を。もういい大人はずなのに、いくつになっても尽きないんだ。
そういう陰口には辟易する。
「まるで自分のことを言われた気がして、悶々とした。そんなときに、女性社員が言ったんだ。『そういう人が努力をしていないっていう根拠はあるの? 私は逆に大変だと思う』、と」
……あれ? それ、なんとなく記憶にあるような……。
思い返せば、確か、同期の男子と偶然会った流れでそんな話をしたような気がする。
視線を彷徨わせ、記憶を辿る。その間にも、浅見さんはまるで昨日のことかのように、ハッキリスラスラと話し続けていた。
「それこそ、いつも言われるのは男性社員が口にしたようなことばかりだったから、女性社員の返しに驚いた。それと同時に、興味が湧いたんだ」
きっと、私だ。同期の話は否定するつもりではなかったけれど、言い方が単なる嫉妬にしか思えなくて。
でも、そのあと、なんて言ったっけ? 確か――。
「どんな人なのかとこっそり見ると、少し背を丸めて立つ女の子で。その子が最後に言ったんだ」
「な、なんて……?」
浅見さんが目を細め、私を見た。
「『案外、孤独に戦っている人たちなのかも』ってね。ああ、言われたらその通りなのかもなって、自分のことなのにやけに納得した。そんなふうに思ってくれる人もいるんだってうれしくなった」
記憶と重なった。
でも、社内に出入りしていたのには知らなかった。こんなに端整な顔立ちだから、もし見ていたら忘れるわけないし、顔を合わすことがなかったんだろうな。
一年前を遡るも、まったく浅見さんのことは思い当たらなかった。
「男性社員が言うには、『社会は、親が立派だとそれだけで得するようになっているんだ』っていうようなことを話していた。正直、耳が痛かったよ」
「えっ、その話は……」
「うん。たまたまだけどね」
偶然にもほどがある。
浅見さんは、平然を装っているけれどやっぱりそういうこと、気にしているのに。
だいたい、なんでわざわざ社内でそんな話題を。もういい大人はずなのに、いくつになっても尽きないんだ。
そういう陰口には辟易する。
「まるで自分のことを言われた気がして、悶々とした。そんなときに、女性社員が言ったんだ。『そういう人が努力をしていないっていう根拠はあるの? 私は逆に大変だと思う』、と」
……あれ? それ、なんとなく記憶にあるような……。
思い返せば、確か、同期の男子と偶然会った流れでそんな話をしたような気がする。
視線を彷徨わせ、記憶を辿る。その間にも、浅見さんはまるで昨日のことかのように、ハッキリスラスラと話し続けていた。
「それこそ、いつも言われるのは男性社員が口にしたようなことばかりだったから、女性社員の返しに驚いた。それと同時に、興味が湧いたんだ」
きっと、私だ。同期の話は否定するつもりではなかったけれど、言い方が単なる嫉妬にしか思えなくて。
でも、そのあと、なんて言ったっけ? 確か――。
「どんな人なのかとこっそり見ると、少し背を丸めて立つ女の子で。その子が最後に言ったんだ」
「な、なんて……?」
浅見さんが目を細め、私を見た。
「『案外、孤独に戦っている人たちなのかも』ってね。ああ、言われたらその通りなのかもなって、自分のことなのにやけに納得した。そんなふうに思ってくれる人もいるんだってうれしくなった」
記憶と重なった。