エリート専務の献身愛
「結果的には、待っていましたけど」

 なんだか楽しくなってしまって、ちょっと意地悪を言ってみる。

「わかってる。ごめん。だから、今度はオレが待つよ。いくらでも」
『待つ』? ほかになにか待たせるようなことあったかな?

 首を捻って考えてみる。やっぱり心当たりがない。
 浅見さんをジッと見上げていると、両肩に優しく手を乗せられる。

「この部屋は、瑠依と一緒に暮らせたらと思って決めた」
「えっ……」
「もちろん、結婚を前提に」

 不意打ちの再会だけでもものすごく驚いて、今でも現実なのかどうかと思うくらいなのに。『結婚』だなんて!

「ど、どうしてそんな大事なことを即決できるんですか。私なんて、仕事の日はコンビニ弁当だし、掃除もこまめにしないし」
「へぇ。そうなんだ」
「疲れてたらなにもしたくなくて、そのままソファで寝ちゃうし」
「うん」
「だから、その」
「なに?」

 好きな人に自分のだらしないところを晒すなんて、本当ならしたくない。
 だけど、状況が状況だ。そういうことをちゃんと言っておかなきゃ、浅見さんが後になって気が変わることだって大いにありうる。

 そう思って次々と例をあげたのに、浅見さんは顔色ひとつ変えないで、穏やかな表情をしている。

「幻滅……されそう」

 私だって一緒にいたいって思っている。
 ただ、どう考えても、浅見さんより絶対に私のほうが欠点が多いはずだから。

 自信のない声でぼそりと言うと、彼は再び私を抱きしめる。

「しない。それに、そういう生活でいいんじゃない? お互いに甘えられるところは甘えて、頑張りすぎない毎日が自然で平穏で……幸せだ。それに、二か月前の約二週間で、瑠依の人間性は見れたし」

 確かに、無理する関係になってしまったら長続きはしないと思う。
 そうは言っても……。
< 182 / 200 >

この作品をシェア

pagetop